梅毒(前地帯現象など)

 

 

I期とII期(早期顕症梅毒)

I期(3週~3カ月):

感染から約3週間の潜伏期の後にTp侵入部位に自覚症状を欠く皮疹。

初期硬結ができ、 やがて潰瘍化(硬性下疳)し、 数週間で自然消退。

無痛性の鼠径リンパ節腫脹(無痛性横げん)

II期(3カ月~3年):血行性にTpが全身に移行し、

バラ疹や丘疹、 膿疱、 扁平コンジローム、 脱毛、 粘膜疹(咽頭:乳白色のbutterfly appearance)

泌尿器系:糸球体腎炎やネフローゼ症候群

中枢神経系;頭痛、髄膜炎、脳神経障害、虹彩炎、ぶどう膜炎

筋骨格系では関節炎、骨炎、骨膜炎などの症状を呈することがある。

発熱、全身倦怠感、全身性リンパ節腫大、関節痛、体重減少といった全身症状が出現

III期(3年~10年):ゴム腫

(非特異的な肉芽腫様病変で。皮膚、粘膜、骨の他に各種臓器に生じる可能性)

上気道病変は、軟口蓋や鼻中隔の破壊。

骨病変は、骨折や関節破。

IV期(10年~):心臓、 血管、 骨、 神経系に病変が及ぶ。

心血管系:進行性の大動脈拡張による嚢状動脈瘤の形成や、上行大動脈が侵された結

果、大動脈弁逆流症や冠動脈狭窄を併発。

III期とIV期で臓器梅毒の症状が認められる場合を晩期顕症梅毒。

 

検査と診断:病変部局所からのTpの検出と、 梅毒血清検査。

Tpの検出はI期の硬性下疳とII期の扁平コンジロームから検出されやすく、 刺激漿液を採取し、 暗視野顕微鏡やパーカーインク染色後顕微鏡でTpを検出する。

診断:

抗カルジオリピン抗体と抗Tp抗体。

カルジオリピン抗体は、 脂質抗原(カルジオリピン-レシチン抗原)を用いてガラス板法やカーボン法[RPR (rapid plasma reagin)カードテスト]で検出され、 STS (serological test for syphilis)。感染後抗体価は、梅毒感染後2 ~ 4 週間後に陽性となる。生物学的偽陽性(BFP)あり、 注意。

抗体価が異常に高い場合は、 血清を希釈しないで用いると、 抗体が過剰なため偽陰性を示すことがあり、 前地帯現象。HIV感染症に合併した梅毒等で、 抗体価が異常は注意が必要。

TPHAとFTA-ABSは特異性が高く、 確認検査に。治療効果判定には使用は難しい。

十分な治療を試行しても、抗体価が陰性にならない場合serofast reactionという。

(治療後36か月でも陽性)梅毒治療を開始すると抗体価は低下し、

第1 期梅毒、1年後

第2 期梅毒、2年後

晩期梅毒、5 年後に陰性化すると報告されてい

偽陰性

①梅毒感染初期。この時期はまだ抗体が産生されていないため、

診断には2 ~ 3 週間後に再度検査を試行するか、直接Treponema pallidumを検出する必要がある。

②前地帯現象(prozone phenomenon):RPR やVDRL の抗体価が著明に高値である場合で見られる。約2%の症例。抗体価がピークになる第2 期梅毒患者、妊婦に多い。

偽陽性

膠原病、慢性肝疾患、結核HIV感染患者、妊婦、高齢者

生物学的偽陽性(Biological false positive : BFP)

BFP で抗体価が1:8 を超えることはまれ。

 

CSF では、主に細胞数、タンパクとCSF-VDRL の値
に注目する。非HIV 感染者であれば、細胞数5/mm3
以上、タンパク45mg/dl 以上は、神経梅毒の所見と
矛盾しない19)。CSF-VDRL は疾患特異性が高く、陽
性であれば臨床的に神経梅毒と診断が可能である。
しかし感度は30 ~ 70%と低く、CSF-VDRL が陰性
であっても、疾患の除外とはならない。専門家の中
には、CSF FTA-ABS の測定を推奨するものもいる20)。
この検査はCSF-VDRL と異なり、特異度は低い(偽
陽性の確率が高くなる)が、反対に感度が非常に高
いとされている。従って、CSF FTA-ABS 陰性例で
は、神経梅毒を除外できる可能性が高い。